昆布について

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体がよろコンブ

母なる海といわれるように私たちの起源は海から
誕生したといわれています。
私たちに流れる血液や組織液の成分比率は驚くほど
海水と近いそうです。
その海水で育った昆布には私たちが必要な
栄養が豊富に含まれています。
ここでは昆布に含まれる主な成分と、
私たちに 与えてくれるその役割について
紐解いていきましょう。

グルタミン酸-うま味の素

日本料理に「出し」が欠かせないのは「うま味」が沢山含まれているからというのはご存じだと思います。最近では西洋料理にも取り入れられ「UMAMI」という日本語で通用するようにもなっています。
その「うま味」の成分の筆頭が昆布に断然多く含まれるグルタミン酸です。出し昆布に使われる真昆布にはグルタミン酸が多いといわれるパルメザンチーズの約1.8倍、イタリア料理のうま味の素であるトマトでは約16倍ものグルタミン酸が含まれています。

古来より五感の一つである味覚は、従来の生理学会で基本味として「甘味」、「塩味」、「酸味」、「苦味」の4種類でしたが、京都生まれの池田菊苗東京帝大教授が湯豆腐のおいしさから研究し、発見したうま味成分グルタミン酸がきっかけで5種類目の味覚として「うま味」が世界的に認知されるようになりました。この発見により菊田教授は「日本の十大発明」の一人として知られています。
また、このグルタミン酸はカツオ節などに含まれる「うま味」成分、イノシン酸や、椎茸などに含まれる「うま味」成分、グアニル酸と合わせると、舌にある味を感じる受容体といわれるセンサーが敏感になり、単なる足し算ではなく味の相乗効果でうま味が倍増、持続することもわかっています。

私たちが「うま味」を感じるのは体に必要なものだからおいしく感じるように出来ているからで、グルタミン酸は私たちの体に無くてはならない「炭水化物」、「脂質」、「ビタミン」、「ミネラル」とともに五大栄養素といわれる「タンパク質」を構成する約20種類あるアミノ酸の一つです。タンパク質として以外にも遊離した形で体内に存在し、摂取することによって体内の生理現象に重要な働きがあることがわかっています。近年、脳や舌以外に胃粘膜にもあることがわかった受容体が、摂取したグルタミン酸に反応して消化吸収を促進してくれたり、小腸の粘膜で吸収され、腸管が正常に働くための代謝燃料として免疫力向上や毒物からの防御にも役立っています。赤ちゃんの大切な栄養源である母乳にもグルタミン酸が多く含まれるのもその理由なのかもしれません。グルタミン酸のうま味によりおいしさを損ねない減塩ができ、高血圧を予防できることもメリットです。

近年耳にするようになったドライマウスにも「うま味」による唾液の分泌促進に効果があるようで、酸味による唾液分泌と同程度分泌されるうえ、その効果が長く続くことがわかっています。
余談ですが、脳内でも炭水化物からくる糖がグルタミン酸に必要な量が合成され、重要な神経伝達物質として役割を果たしていますが、食事から摂ったグルタミン酸は小腸で吸収・消費されますので脳内に送られることはありません。

マンニット-優しい甘さ

乾燥された昆布の表面にグルタミン酸と共に白い粉としてみられる糖類。甘みがありグルタミン酸と同じく昆布のおいしさを決める成分です。マンニトールともいわれる糖アルコールの一種で体内で消化分解を必要としない単糖。代謝をする時、インシュリンに依存しないため糖尿病患者の甘味料として利用されています。熟したリンゴにみられる蜜の正体であるソルビトールとは構造は違いますが同じ組成です。出しを取る前に昆布を洗ってしまう方がおられるようですが、大事なおいしさを流してしまいますので、かたく絞った布でふく程度にしてください。

食物繊維-体内をお掃除してくれます

アルギン酸

昆布など褐藻に多く含まれる多糖類。海藻のぬめり成分の一つで食物繊維の一種です。
水溶性のアルギン酸カリウムは胃の中に入ると、胃酸によりアルギン酸とカリウムに分解され、切り離されたカリウムは体内に吸収され、一方アルギン酸はナトリウムと結合しアルギン酸ナトリウムとなり体外に排出されることから、塩分の取りすぎによる高血圧の予防となり、分解されたカリウムは血圧を下げる働きがあります。また、ぬめりにより余分なコレステロールを包みこんで体外に排出する作用で動脈硬化予防、胆石予防の効果もあります。
不溶性のアルギン酸カルシウムはコレステロールが原料の胆汁酸を吸収し、排出する効果があります。
他にも、アルギン酸を摂取することで、満腹感を長時間感じることができるので過食を防ぎ、体内にほとんど吸収されることがないため、摂取カロリーを下げるダイエット効果や、食物繊維の一種として、便秘の解消はもちろん、善玉菌が増えやすくしたり、老廃物の排出や腸の動きを活発にしたりと腸内環境を整える効果があります。

変わったところではアルギン酸を日常的に摂取しておくことで、カルシウムと似た性質がある消化管内の放射性ストロンチウムと繋がり、体外へ排出させる高い効果も認められています。

ラミニン

アミノ酸の一種でコンブ科の学名「ラミナリア」から名付けられたそうです。コレステロール吸収の抑制作用や、血管壁の強化、血圧降下作用などがあります。但し、血圧降下作用は一過性のもので、時間が経過とともに元の血圧に戻ってしまいます。少しづつでもバランス良く摂りつづける事が必要です。

フコイダン

硫酸多糖類でねばりがあり、食物繊維の一種。アルギン酸同様便秘の解消はもちろん、善玉菌が増えやすくしたり、老廃物を排出や腸の動きを活発にしたりと腸内環境を整える効果があります。また、体を本来の弱アルカリ性に戻す抗酸化作用やガン細胞のアポトーシス(自滅)作用、抗菌作用、胃粘膜保護作用、胃潰瘍治癒促進作用等の効果があるとして研究が進められています。

フコキサンチン

硫酸多糖類でねばりがあり、食物繊維の一種。アルギン酸同様便秘の解消はもちろん、善玉菌が増えやすくしたり、老廃物を排出や腸の動きを活発にしたりと腸内環境を整える効果があります。また、体を本来の弱アルカリ性に戻す抗酸化作用やガン細胞のアポトーシス(自滅)作用、抗菌作用、胃粘膜保護作用、胃潰瘍治癒促進作用等の効果があるとして研究が進められています。

ミネラル

カルシウム

昆布には牛乳の約7倍のカルシウムが含まれています。人体の中で最も多いミネラルで、貯蔵カルシウムとして骨や歯に、機能カルシウムとして神経や筋肉血液に存在しています。機能カルシウムが不足すると、生命を守るために副甲状腺ホルモンが働き、貯蔵している骨からカルシウムを取り出して血液により補充されます。この状態が長く続くと骨粗しょう症になってしまいます。

カリウム

昆布にはパセリの約5倍、納豆の約8倍のカリウムが含まれています。食習慣の変化で塩分を取り過ぎてしまいがちですが、減塩に努めるとともに、ナトリウムの排泄を促して血圧を下げる働きのあるカリウムを積極的に摂る事が推奨されています。

ヨウ素

人にとって必須元素。体内で甲状腺ホルモンを合成するのに必要です。甲状腺ホルモンは全身の各細胞で呼吸量、エネルギー産生量を増大させるので、基礎代謝量の維持や促進が起こります。海藻等から摂取することの多い日本人に不足することは少ないのですが、不足すると全身がエネルギーを利用できなくなり機能が低下してしまいます。
逆に必要量を超えて摂取してしまっても、その大半が血中から尿中に排出されて甲状腺に蓄積されない事がわかっています。この事から、核攻撃や原子力発電事故などの核分裂によって生成され、体内に入る放射性ヨウ素の身体への蓄積を防ぐ為に、体内で被爆しない安定ヨウ素剤を摂る事が有効とされています。

昆布の歴史

都への特産品として

日本という国が歩みを始めた時期を記した続日本紀に蝦夷(東北地方)から朝廷への献上品として納められていたという記述がみられるように、昆布は古来より北からの海の幸として重宝されてきました。古くから漁業が盛んで良港の多い若狭湾まで蝦夷から日本海を海上輸送され、琵琶湖を通って運ばれた都には海藻を売る店もあったそうで、カルシウム等の補給にも重要な昆布は都人にも親しまれていたのかもしれません。

縁起物として

戦国時代には、昆布は乾物であることから保存食や野戦食として食された他、出陣式や戦勝祝いに行われる儀式にも使われたようです。これを「三献の儀」と言います。
※三献の儀
中国由来の陰陽に基づいて儀式化されたもので、瓶子に酒を、三宝に「打ち鮑」、「搗ち栗(勝ち栗)」、「昆布」で三種と「かわらけ(素焼きの杯)大中小の三枚」を用意し、まず一献目、「打ち鮑」を口に入れて盃の酒を三度に分けて飲み干す、次に二献目、「勝ち栗」を口に入れて同様に酒を飲み干す、最後に三献目、「昆布」を口に入れてまた同様に酒を飲み干す。その後、振りかぶった杯を床に打ちつけ叩き割り、大将の「エイッエイッ」の掛け声の後に、皆で「オーッ」と鬨(とき)の声を三度上げたのだそうです。これで「敵に打ち(アワビ)、勝ち(クリ)、喜(コブ)」祈願になるわけです。また、戦勝祝いの時は食べる順番が変わり、「勝ち栗」、「打ち鮑」、「昆布」の順に食します。そうすると、「勝ち、家、喜ぶ」となります。駄洒落のようですが、当時の戦を描いた絵巻物には陰陽師の姿があるように、縁起担ぎは戦国武将にとって運命のかかった大事な儀式であったのでしょう。

北前船などの水運の畿内向け主要品目として

江戸時代になると、既に一大流通拠点となっていた大坂まで北日本の産品を畿内へ送るには、従来の北国海運ルートを経て敦賀から琵琶湖、淀川と内陸水運ルートで運ぶよりも、東北の米輸送コストダウンが目的の幕命を受けた商人の河村瑞賢によって拓かれた西廻航路(日本海から関門海峡、大坂経由江戸まで)が主流になり、昆布など様々な物品が集積され、日本全国へ、琉球や中国大陸へも流通するようになっていきました。特に昆布は「出し」や素材としての原藻以外にも、佃煮、おぼろ、とろろ等、様々な加工がされ各地に流通して行きました。近隣の京都、奈良では今でも昆布の佃煮の消費量が多い地域です。

主な産地・種類

日本で消費される昆布の約90%は北海道産で、他には東北産や中国・韓国からの輸入物も流通している。

真昆布

特徴:厚み・葉幅がありしなやかな繊維で高級品が多い。出し昆布として専門店等で販売しているものは甘みのある澄んだ上品な出しが取れるので素材本来の味を損なわない名脇役として重宝される。塩昆布等では繊維が比較的柔らかいのでもちもちとした食感が楽しめる。白口浜産の昆布は江戸時代には松前藩が朝廷や将軍家に献上昆布として納められていた。

産地:道南の函館周辺から室蘭までの沿岸他、東北沿岸でもとれる。地域ブランドとして道南三銘柄という白口浜、黒口浜、本場折浜といわれるエリアがあり、上質な真昆布がとれる浜として知られる。

【主な産地】
  • 白口浜:尾札部(おさすべ)、木直(きなおし)、川汲(かっくみ)、安浦(やすうら)、臼尻(うすじり)、大船(おおふね)、鹿部(しかべ)、砂原(さわら)
  • 黒口浜:椴法華(とどほっけ)、恵山(えさん)、古武井(こぶい)、尻岸内(しりきしない)、日浦(ひうら)、東戸井(ひがしとい)、西戸井(にしとい)
  • 本場折浜:西戸井(にしとい)小安(おやす)、石崎(いしざき)、銭亀(ぜにがめ)、宇賀(うが)、根崎(ねざき)、函館(はこだて)

用途:出し昆布、おぼろ昆布、とろろ昆布、塩吹き昆布、塩昆布、バッテラなど

羅臼昆布

特徴:葉幅は広く、3m程に成長する。真昆布に並ぶ高級昆布。出し昆布では特徴のある香りがある濃厚でコクのある出しが取れるが、にごりがでる。色で黒口と赤口に分かれる。別名「利尻系えながおに昆布」

産地:知床半島先端から東側半島付け根周辺。黒口は半島先端寄りに、赤口が半島南端寄りに比較的多い

用途:出し昆布、おぼろ昆布、とろろ昆布、おやつ昆布など

利尻昆布

特徴:葉幅が狭く、繊維がしっかり固め。出し昆布では澄んだ、塩気の少し効いた繊細な出しがとれる。懐石料理などのベースに使われることが多い。 京都では出し昆布としての評価が最も高い。

産地:道北地方、留萌から宗谷岬を経て網走までと、利尻・礼文島

【主な産地】
宗谷(そうや)、声問(こいとい)、稚内(わっかない)利尻島〈沓形(くつがた)、鴛泊(おしどまり)、鬼脇(おにわき)、仙法志(せんほうし)〉、礼文島〈香深(かぶか)、船泊(ふなどまり)〉、北見・留萌など

用途:出し昆布、おぼろ昆布、とろろ昆布

日高昆布(三石昆布)

特徴:三石昆布のなかで日高地方産をさす。濃炭色に濃緑を帯びているものが多い。潮通しの良い岩礁に密生することが多い。比較的繊維質が柔らかく、煮上りが早いので佃煮、煮物など食べる事が主目的の利用に適しているが、関東地方他、大手スーパー等の全国チェーンなどではだし昆布として一般的に流通している。

産地:主な産地は沙流郡日高町富浜周辺から白糠郡白糠町周辺までで、三石昆布として室蘭から南へ恵山を越え函館市汐首岬周辺までが産地となっている。

【日高昆布の主な産地】
富浜(とみはま)、門別(もんべつ)、厚賀(あつが)、新冠(にいかっぷ)、静内(しずない)、春立(はるたち)、三石(みついし)、荻伏(おぎふし)、東栄(とうえい)、井寒台(いかんたい)、浦河(うらかわ)、様似(さまに)、平宇(ひらう)、旭(あさひ)、冬島(ふゆしま)、近笛(ちかふえ)、本幌(ほんぽろ)、歌別(うたべつ)、歌露(うたろ)、東洋(とうよう)、岬(みさき)、庶野(しょや)
※日高昆布には、生育する浜の環境で品質の差が出るという事から、特上浜、上浜、中浜、並浜と称する浜格差がきめられています。

【道南三石昆布の主な産地】
椴法華(とどほっけ)、恵山(えさん)、古武井(こぶい)、尻岸内(しりきしない)、日浦(ひうら)、東戸井(ひがしとい)、西戸井(にしとい)、尾札部(おさすべ)、木直(きなおし)、川汲(かっくみ)、安浦(やすうら)、臼尻(うすじり)、大船(おおふね)、鹿部(しかべ)

用途:昆布巻き、佃煮、惣菜、昆布飴など幅広く使用されている。

長昆布

特徴:最も生産量の多い昆布で、釧路周辺から根室半島沿岸に生育している昆布(こんぶ)です。全長が6メートルから最大で20m程にもなることがある。出しがあまり出ず、安いので、手軽に食べる昆布として使用されている。近年男性の平均寿命が日本一から急激に短くなった沖縄では、本土から入ってきていたこの昆布などを使い野菜不足の代わりとしていた伝統的な食生活をしなくなったからともいわれている。

産地:歯舞(はぼまい)、根室(ねむろ)、落石(おちいし)、釧路東部(くしろとうぶ)、昆布森(こんぶもり)、厚岸(あっけし)、散布(ちりっぷ)、浜中(はまなか) br> 宗谷(そうや)、声問(こいとい)、稚内(わっかない)利尻島〈沓形(くつがた)、鴛泊(おしどまり)、鬼脇(おにわき)、仙法志(せんほうし)〉、礼文島〈香深(かぶか)、船泊(ふなどまり)〉、北見・留萌など

用途:昆布巻、佃煮、おでん昆布等、野菜昆布など

厚葉昆布

特徴:長昆布と同じ浜でとれるが、沖の穏やかな海域を好む昆布。長昆布同様、昆布巻、佃煮、おでん昆布等、煮て食べる昆布として使用されています。釧路では特厚といわれるものも獲れる。別名がっがらともいう。独特の刺激と苦味があるため出し昆布としてはほとんど利用されない。

産地:歯舞(はぼまい)、根室(ねむろ)、落石(おちいし)、釧路東部(くしろとうぶ)、昆布森(こんぶもり)、厚岸(あっけし)、散布(ちりっぷ)、浜中(はまなか)

用途:比較的に低価格の製品として、塩吹き昆布、塩昆布、おぼろ昆布、とろろ昆布、バッテラなど。

優良な昆布生育に必要な事として、の産地に流れ込む川の上流には豊かな腐葉土をもつ森林が不可欠で、母なる海に抱かれ、父なる山に元気に育ててもらってこそおいしく体に良い昆布ができると思っています。